10年以上前に、割と好きだった書店員の仕事を辞めた。
「近い将来、紙の書籍は贅沢品になり、コレクターアイテムのような存在になるだろう」
という森博嗣さんのエッセイを読んで、職を失うかもしれないと思い転職に踏み切った。
当時は、LINEが出始めたばかりの、まだまだキャリアメールが主流だった頃、といえばどのくらい前かイメージしやすいかもしれない。
その頃は電子書籍もちらほらあったけれど、まだまだ普及していなかったような時代だった。
それが、今となっては電子書籍派も増え、24時間いつでもネットですぐにダウンロードできるようになって街の書店は確実に減った。
この10年での変化はとても大きかった、と今でも思う。
今、紙の本は「敢えて選ぶ」ものになりつつある。
森さんは、10年以上前からこんな時代になることを予想していたのだ。
・・・と書くと妙に大袈裟になってしまうけれど
とにもかくにも、森博嗣さんは「考える」ということに長けていて、森さんのエッセイは1冊でビジネス書10冊分くらいの発見があって大好きです。
そんなわけで、最新刊の「積み木シンドローム The cream of the notes 11」を読みました。
まず表紙がかわいいですよね。
ポスターにして部屋に飾りたいくらい。
このクリームシリーズと呼ばれるエッセイは表紙がすべてかわいいので気になった方はぜひネットで調べてみてください。
で、中身。
83 完璧でないものが長生きする理由は何か?不合理を抱える生き方とは。
という、項目が面白かったです。
内容としては
完璧でないものは、何度も修正を重ねることになり、結果としてそれが学びや愛着につながり、長い付き合いになったりする。
というようなものなんですが、これがなんだかすごく共感できました。
仕事でも人間関係でもそうですが、完璧を求める割には、なかなか完璧なものはできないし、実はその完璧に近づける作業というのが「経験」を生んだりしますよね。
完璧でない自分や、完璧でない関係もからも学びは生まれる。
完璧でないものを受け入れ共存しようとすること=柔軟さ、につながっているかもしれないと思うと、完璧でないことも、それはそれでありだと思える。
こういう発想の転換は、生きていくうえで大事なことだな、と思います。
…とまあ、なんだか堅苦しい感じになってしまいましたが、森さんのエッセイには自分にない発想があり、それが考えるきっかけを与えてくれるので、毎回とても楽しいです。
まだ読んだことがない人は、一度読んでみてほしい作家さんです。
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